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最高裁判所第一小法廷 平成9年(オ)1275号 判決

愛媛県伊予三島市寒川町四二二七番地

上告人

青木常雄

同所

上告人

株式会社トキワ工業

右代表者代表取締役

青木常雄

高知市縄手町四八番地

被上告人

大三株式会社

右代表者代表取締役

合田耕三

右訴訟代理人弁護士

小松英雄

右当事者間の高松高等裁判所平成八年(ネ)第二三九号実用新案権侵害差止等請求事件について、同裁判所が平成九年三月二八日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 遠藤光男 裁判官 小野幹雄 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄)

(平成九年(オ)第一二七五号 上告人 青木常雄 外一名)

上告人の上告理由

上告理由書記載の上告理由

一、1. 原判決(高松高等裁判所が平成八年(ネ)第二三九号につき、平成九年三月二八日に言渡した判決)の判決書七頁七行目からに於て、茶葉類を茶パックに入れる際に、一旦閉塞された袋体の開口部を開口して再度閉塞することを必要とする事になる、と判示しているが、どうしてそうなるというのであろうか。

ちなみに、本お茶パックは公報(甲第一号証)一~一三行目に、前記薄片Aの折り畳み部イを前記薄片B側に折り返して核開口部2と三角形状隅角部C、Dを、包被したことを特徴とする、と記載されている様に、あとにも先にもここで一度だけ初めてフタをするのであって、ここ以外のどこにその様な事実があると言うのであろうか。

2. 念の為に右記を平易に説明すると、前記開口部2(注:開口部とは上辺のことで物を入れる為の入口に当る)その上辺全体の中の隅に位置する角の部分を三角形状に狭めたり窄めたり、すなわち狭窄してAの折り畳み部イによって包被した…と述べたものを原判決は勝手に観念的な解釈をして、閉塞されて製造されたお茶パックだと一方的に断定している。

また、参考までに実用新案の登録範囲の補足説明に関する作用の項目で(実公三~四行目)記述している事を左記の通り記す。

茶パックは、その開口部に人数に応じた茶・紅茶或はだし粉末等を入れて開口部を狭窄した後に折り畳み部(注:折り畳み部イ)でカバーして容器の熱湯内に投入してパックより浸出させるものである、と補足説明でも記載している様に、茶葉その他を入れる為にあらためてどこかを開口して物を入れる、とは言っていない。

原判決の判断は不可解であり間違っている。そしてこの間違いは、判決に影響を及ぼすこと明らかな審理不尽の違法がある。

3. いずれにしても原判決に於ける場合、狭窄ということに関してその解釈に「齟齬」があると思えるので、広辞苑または大辞林などによって、狭窄という事の意味内容について左記の通り述べておく。

〈狭窄〉 現状に対して狭く窄まっていること。

〈狭まる〉 〃 幅がせまくなること。

〈狭める〉 〃 幅をせまくすること。

〈狭む〉 〃 せばめる。

〈窄まる〉 〃 だんだんせまくなる。

〈窄める〉 〃 すぼむようにする。

〈窄む〉 〃 小さく縮む。

4. 本お茶パックを構成する機能の中で本質的役割をもつものは「襞(ヒダ)」であって、その襞(ヒダ)を構成する部分はどこか、という位置づけを明確にしながら左記の通り述べる。

方形薄片1の一辺を裏面側に折り畳んで折り畳み部イを相対する一辺を表面側に折り畳んで折り畳み部ロを設け、各々の折り線ハ、ニが同一線上で上端縁と重なるように前記折り畳み部イを外側に、また折り畳み部ロが内側になるように核薄片1を二つ折りして一方を裏薄片A、他方を表薄片Bとし前記両薄片A、Bの両側端を融着3、3して上方に開口部2を有する有底袋体。

右記における折り畳み部(イ)…この部分を通常ヒダという…が、通常の袋子には附加されていないヒダであり、本お茶パックの本質的重要部分であり、このヒダが本お茶パックを構成する機能の中で、絶対に必要な、フタをする、部分であり、フタをしようとする時このヒダの機能によって人為的と無為自然の作用が働き包被が行われる。

ここで襞(ヒダ)の意味内容を、広辞苑や大辞林によって確認しておく。

〈襞(ヒダ)〉・袴・衣服や服地などにつけた、細く折り畳んである細長い折り目。

二、判決書の九頁の一〇行目から一一行目に於て、原判決は(構成要件(4)を追加することにより技術的範囲を狭く限定することで本件考案が登録された)と言うが、上告人が出願当初に示した図のそのままでは狭窄するという主旨を理解し得ぬ向きがあるかもしれない、との御指示を受けて、第四図に示す様に三角形状は狭窄することである旨を付記したわけで、格別に何かを縮小したり限定した事はない。この事を明確にする為に、補足説明によって(考案の効果四頁の一三~一七行目)左記の通りに記述したのである。

つまり、上方左右角部を三角形状に内方に向って折り重ねることによって開口部を狭窄すると共に、他方の裏薄片A側の折り畳み部(注:襞(ヒダ))を折り返して狭窄口と三角形左右隅部(注:上辺の全体)をカバーすることによって開口部(注:上辺全体)を密閉した・・・・と付記して狭窄の意味を明瞭にしたのである。この点においても、原判決は解釈の誤りがあるとともに、審理不尽の違法がある。

三、1.原判決は、判決書の一二頁の六行目から一〇行目で、(明確な三角形ではないことがあるにしても)三角形状に折り重ねられて開口部Eが若干狭窄されることが多い(折り畳み部3が折り重ねられたため、融着部7、8が内側に位置するけれども、それだけにとどまらず開口部Eを若干狭窄する)ことが認められる。と述べて、狭窄することが恰もたまにしかない如く装してみせるが、ここでは必ず狭窄現象が形成される。

原判決が言うところの折り畳み部3とは、別紙参考図面〈1〉のうち、(株)大三が示す物の第三図(断面図)の3であって、この位置づけを上告人の別紙参考図面〈1〉のうち、(株)トキワ工業が示す物の図面に置き換えてみると、それは第一図に示す折り畳み部(イ)の部分であり、同じ断面図では折り畳み部(イ)と表示してある。

それは上告人で言う「襞(ヒダ)という部分である。

2.以降は、襞(ヒダ)という認識に基づいて述べる。

原判決は、判決書の一三頁の一行から四行に、隅角部C、Dを薄片B側の表面内方に向って三角形状に折り重ねないで直角状のまま重畳部3(注:襞(ヒダ)を薄片B側に折り返して開口部Eを包被することが可能であること(開口部Eの狭窄は必然的なものではない)と言っているが、実際は折り返すことができず、観念的に言っているだけである。

念の為にその一端を詳述する。

B面からA面に折り返すときに変化が起こる。この変化によって、それまでの上辺の頂上が毀されて、次には全く別の頂上が反対側に出現して、二度目のヒダが形成される。その事に伴ってそれまでは外側の面であったものが入れ替わって内側の面を形成する事になる。

そして、その逆転してできた内側の内面で、外側からは手をふれることができないままで無為自然に狭めるか、窄まるか、縮めるかの、いわゆる狭窄現象が為されるのである。

(注:広辞苑・大辞林によれば、無為自然とは作為がなく自然のままであること。)

この場合パックのフタをしようとして、外襞(外ヒダ)に手をかけるのであるが、その手に対抗する様に一方の別の指を副える事がなければ、反転する事ができないし、また狭窄する事もなくパックのフタをする事もできない。

3.前記に於て、狭窄機能を構成する位置について示した様に、その襞(ヒダ)の具体的な作用を左記の通りに述べる。

お茶パックの包被に至る説明

(イ) 包被に至る第一例

外襞(外ヒダ)を折り返そうとして。

1. ヒダの内側に指を入れる。

(内側に指を入れただけでは折り返せない反転出来ない。)

2. このため別の指を、反転する生地に副えると反転できる。

(それは後から副える指が、先の指に対抗するとともに窄めるか、狭める作用をするからで、当事者が無意識でその様に作用するように押さえる為である。それは極く自然に狭窄しようと働くものがある事になる。)

以上の通りであるが、狭窄の必要がなければ、後から副える指を改めて副える必要はない。先に入れた指に対して別の指を副えれば、必ず反転できるし、それとともに必ず狭窄現象を形成する。

つまり、2の操作がなければ何人も折り返したり、反転したりする事ができないし、また包被することもできない。

1、に続いて2、の操作を加えれば、何人であっても狭窄が行われ包被する事になる。

(ロ) 包被に至る第二例

外襞(外ヒダ)によって包被しようとする時。

1.包被しようとしてヒダの内側に指を入れる。

2.次に別の指を使って先の指に対抗する様に生地を押さえると、押さえた指が狭窄する為の作用をして

3.それと共に今まで形成されていた上辺は毀れて消える。

4.そしてヒダが反転した様に見える状態で

5.あらためて今までとは全く別の上辺が反対側に形成され、そして襞(ヒダ)も形成されて包被される。

4.別紙参考図〈1〉で示す両者の図の通り、襞(ヒダ)の内側は開口部を含む上辺全体に較べて狭いわけで、せまい方へ挿入するためには幅の大なる方を狭(せば)めなけらば出来ない。それが道理というものであり、その道理に従って人為的にも無為自然にも狭窄作用が働く事になる。

また、生地の柔軟性によってフタができる、と言うのは欺瞞である。

フタができた、と言う結果には、狭窄した痕跡が残る。

それは、先ず人為的に生地を押さえている。そして当事者が自分自身だが無意識的であっても自分の眼で自分の所作を見れば分かる。・・・・生地を狭めるか窄めている・・・・この後は無為自然に働く狭窄現象へと続く。

4.判決書の一三頁の一行から四行に書かれていることは、第一審(松山地方裁判所)における検証結果に記載されているがその中での検証に関して、今も残るビデオを見ればはっきり分かる。それは、被上告人の辻本輔佐人がする実演に於て、包被した襞(ヒダ)の中でムリヤリに内側を両方に押し広げ様とするのは何故か。

それは無意識のうちに無為自然に狭窄現象がある事を認識するが故にする行為であろう。

狭窄された痕跡を消そうとしてもそれは消えないで残る。

このように、原判決は、この点においても、証拠の適用を誤りさらに判決に影響を及ぼすこと明らかな審理不尽の違法を存する。

四、原判決は、判決書の一三頁の五行において、本件訴訟係争中に重畳部3(注:一般的に襞(ヒダ)を折り返した際「上辺左右隅角部C、D」を直角になる様に整える旨の使用方法をパッケージに表示し(以下「表示変更後の使用方法)、と述べているが、別紙参考図〈2〉に示されているように、この内容は、

〈2〉↓の部分を反対側に折り返します。

〈3〉折り返した両端部分が直角になる様に整えます。

注意(反論)

a 直角になる様に整える、と言う事であるが、最終目的のフタをした後で、何の必要があって直角になる様にわざわざ整えるというのか。これを言い換えれば、狭窄の跡を消します、と言う事に他ならない。

b 指を挿入したままの図は、その指を使って狭窄を消せという準備図である。

〈4〉 できあがり状態

注意(反論)

表示する図は直角の四角であり、この図の

如くにはならない。

狭窄の痕跡は消えない。

この通りの直角の四角になるというのは、甚しい欺瞞である。

かくの如く、原告判決には、判決に影響を及ぼすこと明かな審理不尽の違法がある。

五、原判決の判示の全般的主旨に関して反論すれば、ただの一言に尽きる。

本お茶パックについては、上告人が市場で販売を開始してから後数年を経過してから被上告人が参入してきたのであるが、その事は周知の事実である。

その事を承知した上で被上告人等に問いたい事は、最初から襞(ヒダ)を添加し、そしてそれを何時までもそのまま袋から除去しないのは何故か。

「狭窄の必要はないし、狭窄する事もない。」と言い続けながら、そっくりそままを真似てするのは何故か。

本お茶パックに附加されている襞(ヒダ)は、人為的と無為自然の作用によって必ず狭窄状が形成されるもので、狭窄の必要ない物にとっては不要の機能である。

ましてや神代の昔から襞(ヒダ)をつけた袋はないわけで、袋に襞(ヒダ)を付けたのは、本お茶パックが初めてであり、神代の時代からの洋の東西を問わず初めてであった。

それをワザワザ真似る必要はなかろう。

襞(ヒダ)を添加してある限り、狭窄するのは絶対である。従って狭窄の原因となる襞(ヒダ)を除去もしないのでそのままにするのは誠に不可解であり、またその様に積み重ねるムダは、明らかに資源の浪費であり、国家資源の損失である、と言える。

被上告人等に常識があるのなら、過去から現在に至る世界中で、袋に襞(ヒダ)がないのは常識であるから、それを必要とする上告人のお茶パックのとおりに真似て襞(ヒダ)をそままにする事なく、それを取り除くのが常識と言う事だろう。

このように明らかに違法な被上告人の、イ号、ロ号物件の製造販売を中止させず、上告人の控訴審における主張・立証を一顧だにしない原判決は違法・不当であるので直ちに破棄されるべきである。

以上

参考図〈1〉

(ヒダ)

襞に関する両者の図画

〈省略〉

参考図〈2〉

〈省略〉

平成九年六月五日付け上告理由書(追加)記載の上告理由

一、本お茶パックにおける襞(七ダ)の役割と機能に関して

本お茶パックの襞(ヒダ)の持つ役割は、本お茶パックにとっては絶対無二の必要な機能であって、この襞(ヒダ)がなければ単なる一枚の袋でしかない。

その様な単なる袋の状態では、家庭で簡単にフタをすることはできない。

襞(ヒダ)がある故に、家庭内で簡単にフタができ、内容物のエキスをこぼすことなく煮出すことができるのである。それだからこそ多くの消費者が使用する様にたったのである。

このように多くの消費者が簡単に使用できるのは、本お茶パックにおける襞(ヒダ)が作り出す機能の働きに依るものであり、極く自然にする狭める行為{別の指で襞(ヒダ)の外側部分の生地を外側から押える様にして狭窄する}・・・この狭窄行為に誘われるようにして引き続いて無為自然に次なる狭窄(狭める、すぼまる等の)現象が形成される。

以上の情況を経てパックの蓋(フタ)が成されるのである。

二、次にその蓋(フタ)をするに至るポイントを簡単に述べる。

当事者がお茶パックのフタをしようとして

〈1〉襞(ヒダ)の片側を反対側に折り返そうとすると、別の一方の指が無意識のうちに

〈2〉その襞(ヒダ)の外側の部分を押えて狭窄しようとする(せばめ、すぼめ様とする)。

以上の操作によって、その襞(ヒダ)の今までの状態は完全に毀れて全く別の襞(ヒダ)が、狭窄された状態と共に出現する。

しかし、前記〈2〉の様に、一方の指が襞(ヒダ)の外側を押えて生地を内側方向にせばめ様とする行為をしなければ、襞(ヒダ)を反転するこヒはできない。

反転することができないと言うてとば、狭窄される事もない。

三、被上告人が狭窄することがなくてもフタができると言うのは、道理を無視して言うことであり自然の道理は決して生やさしいものではない。

その様な事がないと言うのなら、〈2〉の段階で別の指を使って襞(ヒダ)の生地を押える事をしなければどうなるのか。

目をあけて自分で自分の手元を見れば分かる通り、押えるかの如くに見えるその行為は、良く見れば、生地を内側方向に狭めるか、すぼめる様に作用させているのである。

この事は、このような行為がなければ反転はできないし、素材の柔軟性によってフタをする事ができると言うのは偽りであることが分かる。

もし柔軟性によってフタをする事になるのなら、別の指を使う事をやめて生地を押える事をしなくてもフタができる筈である。

そして、狭窄させずにフタができるのなら、フタをした後で襞(ヒダ)の内側にそのままで残してある指を使って、無理やりに襞(ヒダ)の内側を押し広げて、狭窄された痕跡を消そうとする様な行為は必要ないはずである。

四、また、被上告人は、三角にする事なく狭窄させる事がない、と言う一方で、バッケージには直角になる様に整えます、と表示している。

いずれにしても、その様な形状になる事はないけれど、無理やりこじつけて言う、三角でもなく狭窄する事もなく直角に整えるという理屈に対しては、数学的原理原則には次の様な「ラジアン角」というものがあるが、それを認識すべきである。すなわち現代数学百科の三二七ページには、左記の様に記載されている。

直角(Right Angle)の定義として

直角とは、それと隣る補角と等しいような角である。それを度で測ったものが九〇度である。そしてラジアンで測ったものは二分の一パイである(矢野健太郎訳補書)。

ちなみに、数学的にいう直角とは以上の通りであって、直角が形成される事はほどんどない。それ故に技術者は直角を出す為に苦心を重ねているが、技術的にも直角を作り出す事に不可能である。被上告人の言う直角とは一体どのようにして作られるのか、それを聞きたい。

また、数学的に言えば、全ての多角形は三角形の集合体であるとも言えるのである。

五、この様に数学的な中にも科学的解明ができない天地・自然の法則が厳然として存在している。ここに述べた直角に於ける場合は、作ろうとしても絶対に直角は作り得ないという様に、作ろうとしても作れない事があるという天地・自然の法則がある。またお茶パックの襞(ヒダ)の場合の様に、作るまいとしても作られる狭窄現象がある、という事実を認識すべきであろう。

この場合の狭窄は、人為的によって誘い出され形成されるものであって、結果的には人によって手品の如し、と言ったり、また別の人はまるでコロンブスの卯だヒ言ったが、良く見れば、タネがあり仕掛がある。

それこそが、襞(ヒダ)のもつ機能であつ、襞(ヒダ)の中に存在するのである。素直に眼を開けて見れば、無為自然に狭窄されてゆく実態がわかる。

苦心をしない者には、この様な天地・自然の有様がわからないかも知れないが、それならば真実・事実を眼を大きく開けて見てみるべきであろう。

原審判決は棄却される運命にある。 以上

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